私はヤマハ音楽教室でピアノ講師をしています。
買うなら、安い電子ピアノにしておこう。
と考える方もいらっしゃると思います。
でも、大人の初心者の方が、電子ピアノを価格だけで選ぶのはおすすめできません。
なぜなら、電子ピアノは価格によって性能が大きく変わるから。
私の生徒でも、
という方がいらっしゃいます。
予算を決める前に「どれぐらいの性能が必要か」をはっきりさせておきましょう!
今回は、大人の生徒から聞いた
電子ピアノを買ってから後悔したこと
をもとに、初心者にもわかりやすく電子ピアノの選び方をお伝えします。
- 電子ピアノを買ってから後悔しやすいポイント
- 大人初心者のための電子ピアノの選び方
- 初心者におすすめの電子ピアノ
電子ピアノを買ってから後悔しやすいポイント
大人の生徒さんから、よく聞く電子ピアノの悩みは次の3つ。
- グランドピアノの鍵盤タッチとのギャップが大きい
- 強弱があまりつかない
- ハーフペダルができない
1つずつ、見ていきましょう。
グランドピアノの鍵盤タッチとのギャップが大きい
鍵盤タッチとは、鍵盤を弾いたときに感じる重みです。
グランドピアノは、鍵盤を弾くと少し重みを感じます。
一方、電子ピアノの鍵盤は、グランドピアノの鍵盤タッチに近くなるよう開発されてはいるものの、メーカーやモデルによってタッチ感は、さまざま。
グランドピアノに比べると、かなり軽いタッチのモデルもあるんです。
ピアノ教室ではグランドピアノを使うことが多いんです。
でも、家の電子ピアノの鍵盤タッチが軽いと…
ということになりかねません。
鍵盤タッチは、ピアノ教室に通う予定の方にとって、特に大事なポイントになりますよ。
強弱があまりつかない
弱い音で弾いたり、だんだんと盛り上げて強い音で弾いたり…
そういった音楽の表現がピアノ演奏ではとても大事!
でも、電子ピアノの場合、強弱の表現があんまりできないモデルもあります。
ということがあるんです。
音の強弱だけではなく、
- やわらかい音
- 軽やかな音
- 力強い音
など、音色にこだわってこそピアノの演奏は楽しくなるもの!
気持ちよく演奏をするためにも、豊かな音色表現ができる電子ピアノを選びたいですね。
ハーフペダルができない
ハーフペダルの説明の前に…
ということからお話しますね。
グランドピアノには3本のペダルがあるのですが、なかでもよく使うのが、右側にあるダンパーペダル。
つまり、ダンパーペダルを踏んでいれば、鍵盤から指を離しても、音が長く響くんです。
- 離れた音と音をつなげたいとき
- 音を重ねて響かせたいとき
などに使いますよ!
ハーフペダルは、ペダルの踏み加減で音の響きをコントロールできる機能のこと。
ハーフペダルができる電子ピアノなら…
ペダルを少し踏む → 軽く響く
たくさん踏む → たっぷり響く
というように、響き具合をコントロールできるんです。
ハーフペダルは、ピアノ演奏では欠かせない技術!
電子ピアノを選ぶときは、ハーフペダルに対応しているモデルを選びましょう。
大人初心者のための電子ピアノの選び方
大人の初心者の方が電子ピアノを買ってから後悔しやすいポイントは次の3つでした。
- グランドピアノの鍵盤タッチとのギャップが大きい
- 強弱があまりつかない
- ハーフペダルができない
つまり、買ってから後悔しないためには、次のような電子ピアノを選ぶのがおすすめ!
- グランドピアノに鍵盤タッチが近い
- 強弱の幅が広く、音色が豊か
- ハーフペダルに対応している
1つずつ、見ていきましょう。
グランドピアノに鍵盤タッチが近い
電子ピアノの鍵盤には次の3種類があります。
- 樹脂鍵盤
- 木製鍵盤
- ハイブリッドピアノの鍵盤
下にいくほどグランドピアノの鍵盤タッチとのギャップが少ないんですが、価格も高くなります。

という気持ちもわかります!
私が働く教室では、はじめは樹脂鍵盤の電子ピアノを選ぶ大人の生徒さんも多いんですよ。
ただし、一口に樹脂鍵盤といっても、メーカーによって、タッチ感はさまざま!
さらに、各メーカーには、1〜2種類の樹脂鍵盤があるため、同じメーカーでも種類によってタッチ感が変わります。
下に、5つのメーカーの樹脂鍵盤を表にしたので、参考にしてくださいね!
それぞれ、①の鍵盤の方がグランドピアノの鍵盤タッチに近くなります。
ヤマハ
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①グレードハンマー3(GH3)鍵盤
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②グレードハンマースタンダード(GHS)鍵盤
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カワイ
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①レスポンシブ・ハンマー・アクションⅢ
|
②レスポンシブ・ハンマー・アクション・スタンダード
|
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ローランド
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①PHA-4スタンダード鍵盤
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カシオ
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①3センサースケーリングハンマーアクション鍵盤Ⅱ
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②スマートスケーリングハンマーアクション鍵盤
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コルグ
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①RH3鍵盤
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②NH鍵盤
|
ピアノ教室に通うなどグランドピアノを弾く機会がたくさんある方には、①の鍵盤が搭載された電子ピアノがおすすめですよ。
でも、②の鍵盤には
- スマート
- 軽量
などのメリットも!
そのため、
という方には、②の鍵盤が搭載された電子ピアノがおすすめです。
コンパクトで高コスパな電子ピアノを探している方は5〜7万円台の電子ピアノ | 高コスパモデル6選をヤマハ講師が解説をどうぞ。
強弱の幅が広く、音色が豊か
Twitterで、実際に電子ピアノを使っている大人の方、100人に
電子ピアノとアコースティックピアノのギャップで気になるところ
についてアンケートを取ったところ、表現力という回答がトップでした!
大人の生徒さんで、電子ピアノを持っている方からよく聞く悩みが
①ハーフペダルができない
②強弱がうまくつかないです。
意外と鍵盤タッチの差は気にならないみたいです。
電子ピアノとアコピのギャップで気になるのはどれですか?
回答になければコメントで教えてください🙇♀️— まきの@ピアノ講師 (@amane_makino) October 25, 2020
電子ピアノを選ぶときに表現力はとても大事なポイントなんですね。
- どれだけ音色が豊かに変化するか
- 幅広い強弱を表現することができるか
表現力に関係あるのが、次の2つ!
- 鍵盤センサーの数
- スピーカーの数
表現力豊かな電子ピアノを選ぶためには、スピーカーの数は、4つ以上が理想。
とはいえ、スピーカーが4つ以上となると価格がぐっと上がってしまいます…。
そこで、この記事では、
鍵盤のセンサー
について詳しくお伝えしますね。
スピーカー数にもこだわって選びたい方は「演奏力に差がつく!子供のための電子ピアノの選び方とおすすめ5選」を見てください。
鍵盤のセンサー
グランドピアノには、内部に弦がありますが、電子ピアノには弦がありません。
電子ピアノの中には「音源」という音のデータが入っていて、鍵盤を押すと音源が再生されるしくみになっています。
グランドピアノは、鍵盤を押す
- 強さ
- 速さ
などによって、音量や音色が変わります。
一方、弦のない電子ピアノはどうやって「音量」や「音色」を変えているかというと…
鍵盤にセンサーがあり、それが指の動きを読み取って、動きに応じた音を出しています。
鍵盤にあるセンサーの数が少ないと、指の動きの微妙な違いを読み取ることができません。
表現力が豊かな電子ピアノを選ぶためには、
センサーが3つある鍵盤
または
精度の高いセンサーが搭載された鍵盤
がおすすめ。
樹脂鍵盤の中では、次の鍵盤がセンサーの精度が高いですよ。
ヤマハ | グレードハンマー3(GH3)鍵盤 |
カワイ | レスポンシブ・ハンマー・アクションⅢ |
ローランド | PHA-4スタンダード鍵盤 |
カシオ | 3センサースケーリングハンマーアクション鍵盤Ⅱ |
ハーフペダルに対応している
ペダルの踏み加減で、響きをコントロールすることは、ピアノ演奏において、とても大事なこと。
スタンド一体型(脚つき)の電子ピアノなら、ハーフペダル機能がついているモデルが多いです。
注意しなければいけないのが、卓上タイプの電子ピアノ。
卓上タイプに付属しているダンパーペダルでは、ハーフペダルができない場合もあるので、確認しましょう。
詳しくは卓上電子ピアノのおすすめ7選 | ヤマハ講師が選び方と注意点を解説に書いています。
練習が楽しくなる電子ピアノの選び方
ここまで、買ってから後悔しないための「電子ピアノの選び方」をお伝えしました。
つづいて「練習が楽しくなる電子ピアノの機能」について見ていきましょう。
電子ピアノには、
- Bluetoothオーディオ機能
- アプリ
- レッスン機能
- 録音機能
など、アコースティックピアノにはない、楽しい機能があります。
ひとつずつ、くわしく見ていきましょう。
Bluetoothオーディオ機能
「電子ピアノ」と「スマホやタブレット」をBluetooth接続して、スマホ内の曲を電子ピアノで再生できる機能です。
- 好きなアーティストの曲に合わせて演奏する
- YouTubeのレッスン動画を再生しながら練習する
などの楽しみ方が、できますよ!
アプリ
「カワイ」「ヤマハ」「ローランド」「カシオ」には、電子ピアノ専用の無料アプリがあります。
- スマホを電子ピアノのリモコンとして使う
- 日々の練習の記録
- 自動での譜面作成
など、メーカーによって、いろいろな機能が使えます。
レッスン機能
電子ピアノには、曲が内蔵されています。
内蔵曲は、聴くだけではなく、
- テンポを変える
- 片手のみ再生する
- 部分的に繰り返して再生する
などができたりと、練習にとても便利!
録音機能
自分の演奏を録音して聴いてみることは、上達のためにもとても大事!
また、「右手だけ録音して、それを再生しながら左手を弾く」など、練習にも役立ちます。
録音機能があるかも、チェックしてみましょう!
大人の初心者におすすめの電子ピアノ
買ってから後悔しないために電子ピアノを選ぶときにチェックしたいポイントは次の3つでした。
- グランドピアノに鍵盤タッチが近い
- 強弱の幅が広く、音色が豊か
- ハーフペダルに対応している
今回は、10万円前後の価格のモデルの中で、上の3つのポイントを満たしている電子ピアノを紹介します。
おすすめは、次の5つ。
- カワイ「ES120」
- カワイ「CN201」
- ヤマハ「YDP–165」
- カシオ「PX–870」
- ローランド「RP–701」
ひとつずつ、くわしく見ていきましょう。
カワイ「ES120」

今回、おすすめするモデルの中で、卓上タイプなのは、カワイ「ES120」だけ。
なぜなら、卓上タイプの電子ピアノは、鍵盤部分がコンパクトに設計されているため、
グランドピアノの鍵盤タッチとのギャップがある
と感じる方が多いから。
しかし、カワイ「ES120」は、卓上タイプながら、鍵盤タッチに自然な重みがあり、グランドピアノとのギャップを感じにくいのが特徴!
- Bluetoothオーディオ
- アプリ
など機能も充実していて、
- 本格的な演奏をしたい方
- 趣味としてピアノを楽しみたい方
どちらの方にもおすすめです。
「ES120」について、もっと知りたい方は、ES120をヤマハ講師が弾いた感想 | 鍵盤タッチや機能を徹底レビュー!をどうぞ。
カワイ「CN201」
「CN201」は、2022年9月に発売された新モデル!
鍵盤タッチで選ぶなら、10万円クラスの電子ピアノの中で一番おすすめのモデルです!
購入の決め手になったのが、鍵盤タッチでした。
この鍵盤なら、
ということも少なくなると思います。
また、嬉しいのが、打鍵音を抑制してくれるところ!
電子ピアノって、音量調節ができたり、ヘッドホンで演奏できたりするのが魅力ですが、意外と気になるのが打鍵音なんです。
夜間だと、「カタカタうるさい!」と家族からクレームがあるとの話もよく聞きます。
ヤマハ「YDP–165」
2022年4月に発売された新モデル!
前モデルとの大きな違いは、バーチャル・レゾナンス・モデリングライト!
アコースティックピアノ特有の共鳴音を再現する技術のことです。
これにより、打鍵後の「響き」「余韻」が、とてもリアルになっています。
カシオ「PX-870」
3つのセンサーが順番に打鍵を感知するシステムになっているため、表現力が豊かで連打性にもすぐれています。
- 同時発音数256音
- スピーカー数4つ
など、他メーカーの同価格帯の電子ピアノと比べてコスパが高いのも魅力!
詳しくは「【カシオ電子ピアノのおすすめ7選】価格や機能を他メーカーと比較!」をどうぞ。
ローランド「RP–701」
- 日本語ディスプレイ
- 音色数324
- Bluetoothオーディオ機能
- オーディオ録音可能
と、使いやすく、多機能なRP–701!
無料アプリをダウンロードすれば、
- 日々の練習を自動で記録
- 7日間ほどで1曲弾けるようになる練習メニューの提示
などもできるため、独学で進めたい方にもおすすめですよ。