私はヤマハ音楽教室で講師をしています。
今とは違う電子ピアノで練習していたら、もっと演奏力がのびたはずなのに!
と思う子供の生徒を何人も見てきました。
子供は、日々の練習の中で
- 指の力
- 耳の力
が、ぐんぐんと育っていきます。
そのため、どんな電子ピアノで練習するかによって、上達に大きな差が出てしまうんです。
とはいえ…
とお悩みの方も多いですよね。
そこで、今回は
子供の演奏力を伸ばすために、どんな電子ピアノを選べばいいか
について、次の順番で解説していきます。
- 電子ピアノでも上達するのか
- 子供の電子ピアノの選び方
- 予算の決め方
- 価格帯による性能の違い
- 子供におすすめの電子ピアノ10選
電子ピアノでも上達するのか
やっぱりアコースティックピアノの方がいいの…?
と気になる方も多いですよね。
私が教えている教室では、「アコースティックピアノを持っている生徒」より「電子ピアノを持っている生徒」の方が多いです。
住宅環境からアコースティックピアノを置けない方が多いのですが、電子ピアノがあるおかげで、たくさんの子供たちが教室へ通ってくれています。
- コンクールで賞を取りたい
- 音高、音大を目指したい
という場合はアコースティックピアノがおすすめですが、そうでなければ電子ピアノで問題ありません。
今の電子ピアノは「鍵盤」も「音色」もアコースティックピアノにとても近くなっているため、演奏力をしっかりと伸ばしていくことができますよ。
また、電子ピアノには次のようなメリットもあります。
- 音量調節ができる
- 調律が不要
- 録音、メトロノーム、内蔵曲など豊富な機能
とはいえ、お子さまの演奏力を伸ばすためには、
どんな電子ピアノを選ぶか
が、とても大事です。
それでは「子供のための電子ピアノの選び方」を見ていきましょう。
子供の電子ピアノの選び方
という生徒をたくさん見てきました。
なぜ、そうなるかというと、家の「電子ピアノ」と、教室の「グランドピアノ」とのギャップが大きいから。
グランドピアノとのギャップがある電子ピアノでは、
- 指の力がつかない
- 演奏表現力が育たない
というデメリットがあるんです。
つまり、子供の電子ピアノを選ぶときに、一番大切なのは、「グランドピアノとのギャップを小さくする」ということ!
ポイントは、次の4つ!
- 鍵盤タッチ
- 音色が豊かに変化するか
- 連打性
- 高さ調整のできる椅子
1つずつ、くわしく見ていきましょう。
鍵盤タッチ
家では弾けたのに教室では弾けない!
となってしまう理由は、家にある電子ピアノの鍵盤が、グランドピアノに比べて軽いから。
ちゃんと練習しているのに、レッスンでうまく弾けないのはかわいそうですよね。
それに、家の電子ピアノの鍵盤が軽いと、グランドピアノで弾くときに手のフォームがくずれてしまうこともあります。
正しい手のフォームを身につけるためにも、鍵盤タッチがグランドピアノに近いモデルを選びましょう!
音色が豊かに変化するか
グランドピアノは、内部に弦があります。
そして、鍵盤を押すとハンマーが弦を打つ仕組みになっています。
鍵盤を押す「強さ」「スピード」のわずかな違いで「音色」が無限に変わるのがグランドピアノの特徴!
子供の演奏表現力は、変化するピアノの音色を弾き分けることで育つんです。
そこで、子供のための電子ピアノを選ぶときに大事なのが
音色がどれだけ豊かに変化するか
ということ。
「音色の豊かさ」に関係するポイントは、次の2つ。
- 音源
- スピーカー数
のちほど、くわしく解説しますね!
連打性
連打性とは、トリルなどの細かい音符を弾いたり、同じ音を連続で速く弾くときに、どれだけ電子ピアノが反応できるかということです。
グランドピアノは、1秒間に何回、同じ音を続けて弾くことができると思いますか?
電子ピアノはというと、モデルによって違うんです。
モデルによっては、指の速い動きに反応できずに音がポツポツと、とんでしまうものもあります。
となってしまわないよう、電子ピアノを選ぶときは、連打性もチェックしましょう!
高さ調整のできる椅子
ピアノを弾くときには、姿勢がとても大事!
姿勢が正しくないとうまく弾けないし、変な癖がついてしまうと直すのに時間がかかります。
正しい姿勢のためには、椅子の高さを成長に合わせて変えていく必要があります。
そのため、高さ調整ができる椅子が付属している電子ピアノがおすすめ!
スリムタイプの電子ピアノの場合は、高さ調整のできない椅子が付属していることが多いです。
また、卓上タイプの電子ピアノには、椅子が付属していないこともあるため、確認しましょう。
予算の決め方
長く電子ピアノを使い続けるなら、20万円〜の電子ピアノがおすすめ!
なぜなら、20万円〜の電子ピアノであれば、木製鍵盤が搭載されているモデルが多いから。
木製鍵盤は、
- 鍵盤タッチがグランドピアノに近い
- 連打性にすぐれている
という特徴があります。
とはいえ、
という方もいらっしゃいますよね。
はじめは、10万円クラスの電子ピアノを購入し、必要になれば
- アコースティックピアノ
- 電子ピアノの上位モデル
に買い替える方もいます!
つまり、予算は、次のように考えておくといいですよ。
- その電子ピアノを長く使いたいなら、20万円〜
- 上達すれば、買い替えも視野に入れているなら10万円〜
それでは、次のパートで、価格帯による性能の違いについて解説していきます。
価格帯による性能の違い
子供の演奏力に関係がある違いは、次の3つです。
- 鍵盤
- 音源
- スピーカーの数
1つずつ、見ていきましょう。
鍵盤
電子ピアノの鍵盤には次の3種類があります。
- 樹脂鍵盤
- 木製鍵盤
- アコースティックピアノと同様のアクション機構を搭載した鍵盤
価格帯の目安としては…
- 樹脂鍵盤…〜10万円台
- 木製鍵盤…20万円〜
- アコースティックピアノと同様のアクション機構をとり入れた鍵盤…30万円〜
樹脂鍵盤より木製鍵盤の方がグランドピアノの鍵盤タッチに近くなります。
なぜなら木製鍵盤は、
- 樹脂鍵盤に比べて長さがあるため鍵盤の奥の方でも弾きやすい
- ブレが少なく連打性にすぐれている
からです。
樹脂鍵盤は、木製鍵盤に比べると鍵盤が短いんです。
そのため、鍵盤の奥の方を弾いたとき、沈みが浅くなり、グランドピアノの鍵盤とギャップを感じやすくなります。
また、樹脂鍵盤は中身が空洞です。
中身のつまった木製鍵盤の方が安定していて元の位置に戻るのも速く、連打性にすぐれています。
音源
グランドピアノは、内部に弦があります。
そして、鍵盤を押すとその奥にあるハンマーが弦を打ち、音が出る仕組みになっています。
一方、電子ピアノは、鍵盤を押すとそれをセンサーが感知して「音源」が再生される仕組みになっています。
この「音源」は、メーカーごとに独自に作られています。
どのような「音源」が入っているかで、音色の豊かさが変わるんです。
各メーカーには、いくつかの「音源」があり、上位の「音源」が入っている電子ピアノほど、価格が高くなります。
スピーカーの数
グランドピアノは楽器全体から音が鳴りますが、電子ピアノはスピーカーのある場所からしか音が鳴りません。
スピーカーの数が多い電子ピアノほど音が立体的に聴こえ、グランドピアノの聴こえ方に近くなります。
また、スピーカーの数が少ないと、音量を小さくしたときに、強弱がつきにくいというデメリットがあります。
電子ピアノは価格が高くなるほど、スピーカーの数も多くなります。
子供のための電子ピアノを選ぶときは、「スピーカー数が4つ以上」のモデルがおすすめですよ。
子供におすすめの電子ピアノ10選
では、子供の演奏力をのばすことができる電子ピアノをチェックしていきましょう。
- 20万円以上の電子ピアノ
- 10万円クラスの電子ピアノ
- 卓上タイプの電子ピアノ
にわけて紹介していきます。
20万円以上の子供におすすめの電子ピアノ
20万円以上の電子ピアノになれば、
- 鍵盤タッチ
- 表現力
が、グランドピアノにぐっと近づきます。
なぜなら20万円以上の電子ピアノは
- 木製鍵盤
- 表現力が豊かな音源
- スピーカー数が多い
からです。
子供の演奏力をのばすことができ、1台を長く使い続けることができますよ。
おすすめは、次の6つ。
- カワイ CA401
- カワイ CA501
- カワイ CA701
- ヤマハ CLP-745
- ヤマハ CLP-775
- カシオ GP-310
1つずつ、見ていきましょう。
カワイ「CA401」
鍵盤の性能がいい
それが、カワイの電子ピアノの大きな特徴です。
私は、いろいろなメーカーの木製鍵盤を弾きましたが、カワイの木製鍵盤が一番グランドピアノに近いと感じました。
鍵盤タッチは「重い」「軽い」と表現されることもありますよね。
でも、カワイの木製鍵盤は、重さだけでなく、
- 鍵盤を押したときの指の感覚
- 鍵盤の戻る速さ
などが、グランドピアノにとても近いんです。
そのため、1曲を通して弾いてもグランドピアノとのギャップを感じません。
音源は、ショパンコンクールなどでも使用されているカワイのフルコンサートピアノ「SKーEX」を細かくサンプリング。
また、グランドピアノの共鳴音も再現されているため、音色が豊か!
ピアノ教室でよく使われる
- バイエル
- ブルグミューラ25の練習曲
- ツェルニー30番
- ショパンワルツ集
などのレッスン曲も、200曲内蔵されています。
カワイ CA501
「CA501」は、ひとつ上でお伝えした「CA401」と鍵盤が同じです。
「CA401」との大きな違いは、音色!
CA501 | CA401 | |
音源 | HI-XL音源/88鍵ステレオサンプリングピアノ音源 | PHI音源 |
共鳴音 | アコースティックレンダリング | ○ |
「CA501」と「CA401」は音源が違います。
また「CA501」は、グランドピアノの共鳴をモデリング技術で再現しています。(アコースティックレンダリング)
そのため、「CA401」より、さらにグランドピアノに近い豊かな音色で演奏することができるんです。
カワイの電子ピアノについて、くわしくはカワイ電子ピアノのおすすめ6選 | 選び方やヤマハとの違いを解説!をどうぞ。
カワイ CA701
上でお伝えした「CA401」「CA501」とは、鍵盤が違います。
CA401、CA501 | CA701、CA901 |
グランド・フィール・スタンダード・アクション | グランド・フィール・アクションⅢ |
カワイの木製鍵盤は、質が高く「グランド・フィール・スタンダード・アクション」でもグランドピアノのタッチにとても近いんですが、「グランド・フィール・アクションⅢ」は、さらにグランドピアノの鍵盤とのギャップが少なくなります。
- アコースティックレンダリング(モデリング技術)搭載
- スピーカー数6つ
と、音色も豊かでピアノが上達しても長く使い続けられるモデルです。
ヤマハ CLP-745
「CLP-745」の特徴のひとつが、グランド・エクスプレッション・モデリング。
これは、無限に変化するグランドピアノの音色を再現する技術です。
- 淡い音色
- くっきりとした音色
- あまい音色
など思ったとおりの音色表現が可能!
私も弾きましたが、鍵盤から指を離したあとの音の消え方なども、とてもグランドピアノに近いと感じました。
鍵盤は、グランドタッチ-エス鍵盤が搭載されています。
この鍵盤はとても連打性が高く、速い同音連打でもきれいに音がなります。
ただし、木製鍵盤の中ではタッチが軽めで、
「重さ」をのせて深く打鍵する
というのが難しく感じました。
そのため「ヤマハの木製鍵盤」で選ぶなら、次にお伝えする「CLP−775」がおすすめですよ。
ヤマハ CLP-775
一つ前に紹介した「CLP-745」の上のモデルです。
ヤマハのクラビノーバを購入するなら、こちらの「CLP-775」がおすすめ。
なぜなら、「CLP-745」と「CLP-775」では、搭載されている鍵盤が違い、タッチがかなり変わってくるから。
私も弾き比べましたが、「CLP-775」に搭載されている「グランドタッチ鍵盤」は、
- グランドピアノに近い重さ
- 鍵盤のコントロールもがしやすい
と感じました。
スピーカー数も6つのため、響きも豊かですよ!
カシオ GP-310
GP-310の魅力は、なんといっても鍵盤!
GP-310には、グランドピアノのアクション機構がそのまま搭載されているんです。
鍵盤を押すとハンマーが弦をたたくというアコースティックピアノの仕組みのこと。
かんたんに言うと、GP-310には、グランドピアノの鍵盤からハンマーまでの部分が入っています。
電子ピアノなので弦はありませんが、鍵盤とハンマーの動きがグランドピアノと力学的に同様なので、タッチ感はグランドピアノそのもの!
GP-310であれば、
なんてことは、なくなると思います。
グランドピアノのアクションを搭載したモデルは、「ヤマハ」「カワイ」であれば価格が70万円以上になります。
「GP−310」は30万円台で購入できるのが嬉しいですよね。
10万円クラスで子供におすすめの電子ピアノ
10万円クラスで子供におすすめの電子ピアノは、次の2つ。
- カワイ CN201
- ヤマハ YDP-165
カワイ CN201
10万円クラスの電子ピアノの鍵盤は、どのメーカーも樹脂鍵盤です。
樹脂鍵盤は、木製鍵盤に比べるとタッチが軽め。
でも、カワイのCN201は、ほかのメーカーの樹脂鍵盤に比べると、しっかりとした重みのあるタッチになっています。
理由は、カワイ独自の鍵盤ウェイトにあります。
鍵盤ウェイトとは…鍵盤内部のおもり
白鍵、黒鍵の内部におもりを入れることで、木製鍵盤に近い重みがあるだけでなく、コントロールもしやすくなっています。
鍵盤タッチが購入の決め手になりました!
また、鍵盤には、センサーが3つあり、
- 連打性にすぐれている
- 細かい表現が可能
なのも特徴!
「Bluetoothオーディオ機能」もあり、
- スマホ内の曲を「CN201」のスピーカーから再生
- YouTubeのレッスン動画を再生しながら練習
などの楽しみ方もできますよ。
ヤマハ YDP-165
鍵盤には、3つのセンサーが搭載されていて、連打性が高く、トリルや装飾音符も弾きやすいのが特徴!
また、アコースティックピアノ特有の共鳴音を再現する技術「バーチャル・レゾナンス・モデリングライト」により、響きが豊か!
さらに、「キーオフサンプリング」という技術により、鍵盤から指を離したあとの「音の余韻」までもが、とてもリアルになっています。
卓上タイプの電子ピアノ
という方もいらっしゃいますよね。
卓上タイプの電子ピアノの場合、正しい姿勢になるように
- 電子ピアノを置く台
- 椅子
を調整してください。
卓上タイプの電子ピアノのおすすめは、次の2つ。
- カワイ ES120
- ローランド FP−10
1つずつ、見ていきましょう。
カワイ ES120
据え置きタイプのモデルに比べると鍵盤タッチは軽めですが、
- 連打性
- コントロール性
が高く、グランドピアノとのギャップを感じにくいのが特徴。
音源は、たくさんの国際ピアノコンクールでも使用されているカワイのフルコンサートピアノ「SK−EX」を採用。
アコースティックピアノメーカーならではの、本格的な「鍵盤」「音」が魅力のモデルです。
- Bluetoothオーディオ
- 録音
- 便利な無料アプリ
など低価格ながら、機能が充実しているのも嬉しい特徴ですよね。
ローランド FP−10
「FP−10」の鍵盤には、かなりしっかりとした重さがあります。
卓上タイプながら、ローランドの据え置きタイプのモデルと同じ鍵盤が搭載されているんです。
- 音色15色
- 録音機能なし
など機能はシンプル!
卓上タイプの電子ピアノについて、くわしくは卓上電子ピアノのおすすめ7選 | ヤマハ講師が選び方と注意点を解説をどうぞ。
まとめ
どんな電子ピアノで練習しているかによって、子供の演奏力に大きな差が出ます。
子供の電子ピアノを選ぶときに大切なポイントは4つ!
- 鍵盤タッチ
- 音色が豊かに変化するか
- 連打性
- 高さ調整のできる椅子
ここで紹介した電子ピアノより、さらにグランドピアノに近いモデルを見てみたい方はグランドピアノに近い電子ピアノ【上級者も満足できるメーカーとは】もチェックしてください。