私はヤマハ音楽教室で講師をしています。
ハノンピアノ教本は、指のトレーニングの教本として、とてもよく使われていますよね。
という声も聞きますが、効果の大きい教本です。
しかし!
ハノンは、目的をしっかりと理解してから練習しなければ、その効果は半減!
そこで、今回は
- ハノンの目的
- ハノンの練習法(基本)
- ハノンの練習法(応用)
の順番で、ハノンについて解説していきます。
ハノンの目的
ハノンを練習する目的は次の6つ。
- 指の独立
- 音の粒をそろえる
- イメージした音色を出す
- 「正しい姿勢」や「手のフォーム」を身につける
- 手首を柔らかくする
- 鍵盤と鍵盤の距離(間隔)をつかむ
1つずつ、くわしく見ていきましょう。
指の独立
指の独立とは
どの指も同じように動かせるようになること
です。
ということがなく、
右手、左手のどの指でも同じように動かすことができる
それが指の独立です。
ハノンピアノ教本は、「左右の5本の指」をまんべんなく使った練習ができるため、
- 弱い指
- 動きにくい指
をなくし、「どの指も同じように動かすため」のトレーニングができますよ。
音の粒をそろえる
音の粒をそろえるというのは、かんたんに言うと、全ての音を
- 同じ音量
- 同じ長さ
で弾くということ。
つまり、ハノンを練習するときに、
- 強弱
- 表現
を考える必要はありません!
どの指でも
- 同じ音量
- 同じ長さの音
を出せるようにしましょう。
ただし、
- 音階
- アルペジオ
- 第3部〜
は、別です。
それらは、粒をそろえるのではなく、音楽的に弾くように心がけてください。
イメージした音色を出す
上のパートで、どの音も
- 同じ音量
- 同じ長さの音
で弾くことが大事だとお伝えしました。
でも、それだけでは、まだ不十分!
大事なのは、どの音も「いい音」で弾くこと。
「いい音」とは、自分が「こんな音で弾きたいな」とイメージする音のこと。
ハノンを練習するときは、次の2つをやってください。
- 音色をイメージする
- イメージした音が出ているか聴く
そして、
イメージした音を出せる指をつくる
これが「ハノンピアノ教本」の目的のひとつです。
「正しい姿勢」や「手のフォーム」を身につける
自分にとって、むずかしい曲を弾いていると、
- 身体に力が入ってしまう
- 「姿勢」や「手のフォーム」がくずれてしまう
こともあると思います。
ハノンは、シンプルだからこそ、
- 正しい姿勢
- 手のフォーム
を意識して弾くことができるはず。
ハノンで身につけた弾き方は、そのまま他の曲での弾き方になる
と思って、
- 姿勢
- 手のフォーム
を考えて練習しましょう。
手首を柔らかくする
ハノンを弾くときに、
指だけで弾いていて、手首がほとんど動かない
という方を見かけます。
この弾き方では、手を痛めてしまうことがあります。
ピアノを弾くときは、指先が鍵盤を迎えにいくのではありません。
大事なのは
腕や手首の動きによって、「指が鍵盤に対して自然に下りる」ようにすること
鍵盤と鍵盤の距離(間隔)をつかむ
ハノンは、同じ音型の繰り返しなので、
鍵盤を見ずに弾く
ということがやりやすいと思います。
曲を練習しているとき、
という方は、ハノンを練習するとき、鍵盤を見ないで弾くようにしましょう。
- 楽譜を読んで弾く
- 音をよく聴く
ためにも、鍵盤を見ないで弾くことは大切ですよ。
ハノンの練習法(基本)
ハノンを練習するときに注意したいポイントは次の6つ。
- 姿勢を確認する
- 手首を柔らかくする
- 音の粒をそろえる
- 片手ずつから
- 速すぎないテンポから
- 鍵盤を見ないで弾く
1つずつ、くわしく見ていきましょう。
姿勢を確認する
ハノンで身につけた弾き方は、そのまま他の曲での弾き方になる
と思って、身体に余計な力を入れずに弾くようにしましょう。
- 椅子の高さ…肘のかどが白鍵の表面とほぼ同じ高さになるように
- 椅子の位置…鍵盤の真ん中あたりに手を置き、肘が上半身より少し前にあるぐらい(肩、腕、首を楽に)
- 座り方…上半身の体重が坐骨を通して椅子に伝わるように座る(坐骨→椅子に座ってお尻を前後に揺らし、一番当たる骨)
- 手の形…腕を身体の横にぶらんと下げたときの「手や指」が自然にカーブした形のまま鍵盤にのせる
手首を柔らかくする
ピアノを演奏するときは、指先だけが移動するのではありません。
腕や手首の動きによって「指が鍵盤に対して自然に下りる」ようにしましょう。
「右手の動き」を具体的に言うと…
「1の指から5の指」に上行するにつれて、手首は少し高くなっていきます。
「5の指→1の指」では、手首の高さが元に戻っていきます。
そのとき、手首は、反時計回りに円を描くように動きます。(左手の場合…時計回り)
動画は、わかりやすいように動きを少し大きくしています。
手首を動かすことが目的ではないので、注意しましょう。
大事なのは、
手首はしなやかに動く
というイメージを持ち、手首を固めないようにすることです。
音の粒をそろえる
ハノンを弾くときには、「強弱」や「音楽の表情」を考える必要はありません。
(音階、アルペジオ、第3部〜をのぞく)
大事なのは、
- 音の粒をそろえること
- いい音で弾くこと
そのために必要なのは、
- 音色をイメージすること
- 音をよく聴くこと
です。
- 音の長さ
- 音の大きさ
- 音色
がそろっているか、1つ1つの音をよく聴きながら練習しましょう。
片手ずつから
ひとつ前のパートで「音の粒をそろえて弾く」ことが大事だとお伝えしました。
音の粒をそろえるためには、1つ1つの音をよく聴かないといけないですよね。
はじめから両手で弾いてしまうと、得意な方の手にごまかされて、1つ1つの音を聴けないことがあります。
という方は、はじめから両手でもOKですが、そうでなければ、まずは片手ずつから練習してください。
速すぎないテンポから
ハノンをはじめから、速いテンポで弾くのはおすすめできません。
なぜなら、いきなり速く弾いてしまうと
- 1つ1つの音を聴けない(音の粒がそろっているかがわからない)
- 姿勢や手のフォームを意識できない
から。
はじめは、姿勢や手のフォームを意識できるぐらい、余裕のあるテンポから、練習しましょう。
鍵盤を見ないで弾く
ハノンの目的の1つは、
鍵盤と鍵盤の距離(間隔)をつかむこと
でした。
そのためにも、慣れてきたら、鍵盤を見ないで弾く練習をしましょう。
楽譜を目で追いながら弾くようにすれば、楽譜を読む力もついていきますよ。
ハノンの練習法(応用)
ハノンは、楽譜通りに弾く以外にも、たくさんの練習法があります。
たとえば…
- リズム変奏
- アクセント位置を変えていく
- ppで両手
- 右手f、左手p
- 右手スタッカート、左手レガート
- (右f、左p)→(右p、左f)を1小節ごと交互に
- (右手スタッカート、左手レガート)→(左手レガート、右手スタッカート)を1小節ごと交互に
- 移調
- 半拍ずらして始める(右3つ目の音から左start)
- はじめの音を保持音にする
1つずつ、やり方を見ていきましょう。
リズム変奏
ハノンピアノ教本は、いろいろな出版社から出ていますが、どの教本にも
- 変奏の例
- 応用練習
などが、載っています。
それを参考に、リズムを変えて練習しましょう。
- どの指も同じように動くようにする
- 指先のコントロールをよくする
ために、リズム変奏は、とても大事な練習です。
アクセント位置を変えていく
- 全ての音に
- 表拍のみ
- 裏拍のみ
- 特定の指のみ
など、アクセントの位置を変えて練習します。
ppで両手
ppで引くのは、mfぐらいで弾くよりコントロールがむずかしいもの。
ppでも、音の粒をそろえて弾けるようにしましょう。
右手f、左手p
【右手f、左手p】というように、右手と左手の強弱を変えて弾きます。
【右手f、左手p】ができたら、【右手p、左手f】と逆も練習しましょう。
右手スタッカート、左手レガート
【右手スタッカート、左手レガート】というように、右手と左手のアーティキュレーションを変えて弾きます。
【右手スタッカート、左手レガート】ができたら、【右手レガート、左手スタッカート】と逆も練習しましょう。
(右f、左p)→(右p、左f)を1小節ごと交互に
右手と左手の強弱を変えて弾きます。
1小節ごとに、【右f、左p】→【右p、左f】というように交互にして、弾いていきましょう。
(右手スタッカート、左手レガート)→(左手レガート、右手スタッカート)を1小節ごと交互に
右手と左手のアーティキュレーションを変えて弾きます。
1小節ごとに【右手スタッカート、左手レガート】→【左手レガート、右手スタッカート】というように交互にして、弾いていきましょう。
移調
ハノンは、「音階」や「アルペジオ」以外は、ハ長調で書かれています。
ハ長調は、白鍵しか使いません。
黒鍵を使った練習をするために、移調して弾くのも大事な練習です。
半拍ずらして始める(右3つ目の音から左start)
右手と左手を同時に弾き始めるのではなく半拍ずらしてスタートします。
ハノンは、16分音符で書かれているため、右手の3つ目の音と同時に、左手を弾き始めます。
右手と左手がずれますが、どちらの音も聴けるようにしましょう。
はじめの音を保持音にする
保持音を使った練習は、指の独立に効果的!
はじめの音を保持音にして弾いてみましょう!