私はヤマハ音楽教室でピアノ講師をしています。
細かい音符をきれいに弾けない!
という悩む方も多いですよね。
指が思うように動かないのには、理由があります。
そして、トレーニングをすれば、指は必ず動きやすくなります!
それでは
- 指がスラスラと動かない理由
- なぜトレーニングをすると指が動きやすくなるのか
- 指の独立のためのトレーニング法
- おすすめの指のトレーニングの教本
の順番で解説していきます!
指がスラスラと動かない理由
それは、
脳の仕組みが、指を1本1本、独立して動かせるようになっていないから
たとえば、薬指を1本だけ、動かしてみてください。
他の指もつられて動いてしまいませんか?
また、次の2つをやってみてください。
- 他の指は動かさないように注意しながら、中指を1本だけ動かす
- 物をつかむように全ての指をまとめて動かす
全ての指をまとめて動かす方が、簡単だし速く動いたと思います。
人間の脳は、指を1本だけ動かすより、まとめて動かす方がやりやすい仕組みになっているんです。
だから、ピアノを弾く時のように「指がそれぞれ違う動きをする」というのは、脳にとって大変なこと。
でも、指のトレーニングをすることで、指の独立をうながし、スラスラと動かせるようになっていきますよ。
なぜトレーニングをすると指が動きやすくなるのか
指のトレーニングは「脳のトレーニング」でもあります。
なぜかというと、指が1本1本「独立して動かない」のは、「脳の仕組み」によるから。
私達の脳は、一つ(一まとまり)の脳細胞が一本の指を動かすという仕組みになっていないので、一本だけ指を動かそうと思うと、脳は「大変」だと思うわけです。
引用元:http://www.piano.or.jp/report/03edc/brain/2010/03/29_10477.html
そして、練習をすることによって脳の中で変化が起こり、指が動きやすくなるそうです。
指を動かす訓練を積むと、指を動かす際に働く脳細胞の数が減ることが知られています。したがって、「指同士を独立に動かせるようになるのは、脳の中での変化が起こるから」というのが、現在最も妥当な説明づけと考えられています。
引用元:http://www.piano.or.jp/report/03edc/brain/2010/03/29_10477.html
では、指の独立のためのトレーニング法を見ていきましょう。
指の独立のためのトレーニング法
指の独立のためのトレーニング法は次の4つ。
- 5本の指をまんべんなく使った練習
- 保持音を使った練習
- スタッカート、リズム変奏などパターンを変えて練習
- 右手と左手でアーティキュレーション、強弱を変える
1つずつ、くわしく見ていきましょう。
5本の指をまんべんなく使った練習
指の独立とは、
どの指も同じように動かせるようになること
ということがなく、
どの指も同じように使えるようにする
それが指の独立です。
そのため、5本の指をまんべんなく使う練習を取り入れましょう。
また、
という方も多いですよね。
- 右手
- 左手
どちらの指も使ったトレーニングをしていきましょう。
保持音を使った練習
上のパートで、
どの指も同じように動くようにするため
に、5本の指をまんべんなくトレーニングすることが大事だとお伝えしました。
でも…
という方も多いと思います。
つまり、どの指も同じように動くようにするためには、
- 弱い指
- 動かしにくい指
を中心にトレーニングすることも大事。
そのために効果的なのが…
保持音を使った練習
です。
この練習、はじめは、むずかしく感じるかもしれません。
なぜなら、人は、指をまとめて動かす方が得意だから。
「ある指を動かさないまま、他の指を動かす」というのは、脳にとって大変なことなんです。
でも、日々このトレーニングをしていると、脳から指1本1本への命令の伝達が
- 速く
- 正確に
なっていくので、指が独立して動くようになりますよ。
スタッカート、リズム変奏などパターンを変えて練習
指を動かしやすくするためには、レガートで弾くだけではなく
- スタッカート
- リズム変奏
- アクセント位置を変えて
などの練習が効果的。
この練習は、トレーニングの教本だけでなく、練習している曲の中で
という部分があったときにも使えますよ!
右手と左手でアーティキュレーション、強弱を変える
指の独立のためのトレーニング法、4つ目は、
右手と左手でアーティキュレーション、強弱を変える
です。
「つなぎ方」「切り方」などで、音に表情をつけること。
- スラー
- スタッカート
- アクセント
- テヌート
などの記号があります。
曲の中では
右手はスタッカートで、左手はスラー
という部分もたくさん出てきますが、右手と左手で違う表現をするのはむずかしいですよね。
トレーニングの教本を使い、
- 右手と左手でアーティキュレーションを変える
- 右手と左手で強弱を変える
などのトレーニングをして、右手と左手で違う表現ができるようにしていきましょう。
おすすめの指のトレーニングの教本
指のトレーニングの教本で、おすすめは次の7つ。
- ハノンピアノ教本
- リトル・ピシュナ 48の基礎練習曲集
- ピシュナ 60の練習曲
- ドホナーニ/指の練習
- ピアノの基本 テクニックマスター
- 大人からはじめるハノンピアノ教本
- バーナムピアノテクニック
1つずつ、くわしく見ていきましょう。
中級者におすすめ
まずは、中級者の方におすすめの
- ハノンピアノ教本
- リトル・ピシュナ 48の基礎練習曲集
について、見ていきましょう。
ハノンピアノ教本
ハノンは、指のトレーニングの教本として、とてもよく使われています。
前半部分では、ほとんどの曲が
- 右手と左手が同じ音(ユニゾン)
- 同じ音型の繰り返し
になっているので、譜読みが楽!
そのため、譜読みに時間がかからず、効率よく5本の指を使ったトレーニングができますよ。
また、ハノンピアノ教本にある全調の
- スケール
- アルペジオ
は、ぜひ日々の練習に取り入れてください!
リトル・ピシュナ 48の基礎練習曲集
「リトル・ピシュナ 48の基礎練習曲集」は、ハノンピアノ教本のように、
- 曲の形になっていない
- 同じ音型を繰り返す
指のトレーニングの教本です。
ハノンとの違いは
- 右手と左手が違う動きをする
- 1小節ごとに調が変わる(ハノンは1曲を通してハ長調)
- 保持音を使った練習ができる
です。
「リトル ピシュナ」は、保持音を使った練習ができるため、「指の独立」に効果的!
たとえば、No.10〜No.12は、
1、2の指で重音を押さえたまま、4、5の指を動かす
という練習。
これは「4、5の指の独立、強化」に効果的。
また、
- No.15〜No.16→3、4、5指の独立
- No.17〜No.18→2、3指の独立
など、いろいろなパターンの練習があるので、
- 弱い指
- 動かしにくい指
を重点的に、トレーニングできますよ!
また、「リトル ピシュナ」は、1小節ごとに調が変わります。
つまり、黒鍵をたくさん弾きます。
黒鍵は、白鍵より鍵盤の奥の方にあるため、白鍵と同じようには弾けませんよね。
黒鍵を使ったトレーニングができるのも「リトル ピシュナ」のメリットです。
ちなみに「リトル・ピシュナ 48の基礎練習曲集」は、次に紹介する「ピシュナ 60の練習曲」への導入として書かれたものです。
上級者におすすめ
続いて、上級者の方におすすめの
- ピシュナ 60の練習曲
- ドホナーニ/指の練習
について、見ていきましょう。
ピシュナ 60の練習曲
「ピシュナ 60の練習曲」は、
- 保持音
- トリル
- 重音
- アルペジオ
など、さまざまなテクニックを組み合わせて作られています。
たとえば…
右手で「保持音とトリル」を弾き、左手で「アルペジオ」を弾く
という練習があります。
こういった練習の目的は、いくつかのテクニックを同時に弾きながら、聞き分けられるようになること。
つまり、「楽譜通りに指を動かせたらOK!」ではなく、同時に弾いているテクニックが、頭の中で「分けられていること」が大事なんです。
これは、ポリフォニー演奏でも、とても大事なことですよね。
- ピシュナ 60の練習曲
- リトル・ピシュナ 48の基礎練習曲集
がおすすめの理由は、指の独立だけでなく、それぞれの声部を聞き分ける力がつくこと!
練習するときは、いきなり両手で弾かずに、それぞれのテクニックを分けて、片手ずつから練習してくださいね。
ドホナーニ/指の練習
「ドホナーニ/指の練習」は、次の3つの練習に分けられています。
- 指の独立と強化
- 音階と和音
- 重音奏法
「指の独立と強化」では、保持音を使った練習がたくさん出てきます!
パターンが豊富で、指の独立に、効果が高いですよ。
始めは、難しく感じても
- 片手ずつ
- ゆっくり
から練習していると、動くようになっていきます。
1日で、マスターしようと思わず、毎日少しずつやってみてくださいね。
「音階と和音」のパートの「和音の転回形」の練習では…
- I度の和音以外に、属七や減七の和音が組み合わされている
- 分散和音で弾く練習がある
- 目を閉じて和音の跳躍を弾く練習がある
など、「和音をつかむ練習」が徹底的にできます。
また、音階では…
- 両手で6度、10度になる音階
- 反進行
- 手を交差(右手が低音側を弾く)
- 重音のスケール
などがあります。
「ドホナーニ/指の練習」は、それぞれの練習に対して、たくさんのパターンがあり、高いテクニックを身につけることができます。
初級者におすすめ
初級者の方におすすめのトレーニングの教本は次の3冊!
- ピアノの基本 テクニックマスター
- 大人からはじめるハノンピアノ教本
- バーナムピアノテクニック
1冊ずつ、見ていきましょう。
ピアノの基本 テクニックマスター
初級者の方におすすめの教本、1冊目が、「ピアノの基本 テクニックマスター」。
- 右手と左手が同じ音(ユニゾン)
- 似ている、または同じ音型の繰り返し
なので、ハノンに似ています。
違いは
- 1つの音が16分音符
- 1曲目から指を広げる練習
- 1つの音が4分音符の曲からスタート!
- 1巻の21曲目までは「ドレミファソ」に指を置いたまま弾ける
「ピアノの基本 テクニックマスター」は、ピアノを始めたばかりの方にもおすすめ!
- まずは、ゆっくり
- 1音1音、指の動きを意識しながら(音をよく聴きながら)
- 姿勢や手のフォームに気をつけて
練習してくださいね。
大人からはじめるハノンピアノ教本
「中級者におすすめ」のパートで紹介した「ハノンピアノ教本」。
それを独学でピアノを学ぶ方のために、やさしく編集したのが、「大人からはじめるハノンピアノ教本」です。
- 練習方法
- 練習の目的(身につけるべきポイント)
の解説があるので、初心者の方でも独学で進めていくことができますよ。
ハノンピアノ教本は60番まであるんですが、「大人からはじめるハノンピアノ教本」には、1番〜20番までが入っています。
また、ハノンピアノ教本の39番にあたる「音階練習」については、
- ハ長調
- ヘ長調
- ト長調
の3つが入っていますよ。
バーナムピアノテクニック
「バーナムピアノテクニック」は、ここまでお伝えしてきた教本とは、少し違います。
ここまでお伝えしてきた教本は、「指のテクニックのための教本」で、曲の形になっていません。
それに対して、「バーナムピアノテクニック」は、1つ1つが短い曲になっています。
でも、初心者の方が、テクニックを身につけるためには、効果的!
短い曲になっているため、譜読みもしやすいし、楽しく取り組むことができますよ。
「バーナムピアノテクニック」について、くわしくは【独学ピアノの進め方】基礎を身につければ確実に上達する!をどうぞ。